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新内小唄 喜多川派

  • ブログ
2019年08月18日

三味線教室ってどんなところ?

皆さんこんにちは。
新内三味線奏者、やすのぶです。
長い梅雨が明けてやっと訪れた夏も、早くも秋の気配を感じさせる気候になりました。
私が三味線の世界に入ったのは6歳の6月6日。
(和事の験担ぎ。この日に始めると大成するらしい。)
かれこれ芸歴も(とっくに)四半世紀を過ぎました。

そんな私がお送りするブログは、三味線やお稽古にまつわる事…
特に!
「聞くに聞けない、誰に聞けばいいか分からない」ような事を中心に、発信していきます。
これから始めたい!とお思いの方々の背中を押せるような記事にするべく

入門する側
師匠や教室側

両視点から
分かりやすい解説を心掛けて参ります。

さて、記念すべきブログ第一弾のお題はズバリ!

三味線教室ってどんなところ?

「三味線に興味はあるけれど、教室やお稽古場ってどんなところなのか分からなくて…」
「怖い先生だったらどうしよう」
「そもそも教室ってどうやって選べばいいの⁉︎」

などなど
始めたいし興味はあるけれど、未知の世界すぎて一歩を踏み出せない
そんな皆様の疑問にお答えいたします!


目次
・どんな事をするの?
・教室の種類と、選び方
・必要なお金と、事前に用意すべきもの
・お稽古の頻度と、弾けるようになるまでの期間
・お稽古場での心得
・さいごに


どんな事をするの?


三味線教室では
♪三味線の基本的な弾き方・バチなどの扱い方
♪曲目の練習
♪三味線の曲目で唄う練習
♪邦楽の発声の練習

と言った事をお稽古します。
お稽古の基本スタイルは
師匠一人に対し生徒一人(マンツーマン)もしくは、師匠一人に対し生徒複数人(グループレッスン)で、師匠と対面でお稽古をします。
正座もしくは椅子に座ってご挨拶を交わし、お稽古の時間の平均は一回当たり30分〜45分程度。

入門したばかりの方は
基礎の基礎である三味線の構え方や、バチの持ち方などから始めて、音を出す練習から始めます。
唄に関しても、やはり始めは基礎練習から。
邦楽の発声法や歌唱法は独特ですので、感覚を掴むために丁寧にお稽古をして行きます。
お稽古を重ねて行くと、各自のステップに応じた曲目の習得をメインとしたお稽古になります。
一曲習得→次の曲にチャレンジ。
これを繰り返して行くとどんどんステップアップして習得も早くなり、弾ける・唄える曲が増えて楽しくなって行くこと請け合いです!

教室の種類と、選び方



インターネットで「三味線教室」と検索すると、実に色々な教室が表示されます。
個人の先生の名前だったり、楽器屋さんが運営するものだったり、人気ランキングだったり…。
津軽、長唄、小唄???一体なんだろう???
そんなハテナのオンパレードかもしれません。

三味線教室には様々な種類があります。

ジャンル・個人・カルチャーセンター・楽器店

ただでさえ未知の世界なのに、一目では分かりづらいですよね。
でも、せっかく習うのなら「憧れのあれ!」をちゃんと教えてもらえる所に行きたいものです。
よく知らないままに入った教室が、全くのジャンル違いだった・・・
それはちょっと悲しくなってしまいますよね。

皆さんがちゃんと目的通りの教室に出会えるよう、3ステップに分けて解説をして見ようと思います。
少し長くなりますが、ゼヒ読んでみてください。

 

STEP.1 ジャンルを絞る

まずは教室そのものの、ジャンルの違い
ジャンルに関しては当HP「初めての方へ」のページをご覧ください

まずは自分の中にあるイメージがどのジャンルになるのか、それをはっきりさせると良いでしょう。
分からない場合は、当HPのお問い合わせページからメールを頂ければ、別ジャンルに関することでも可能な限りお答えいたしますのでご相談くださいね♪


ジャンルが変わると、変わるもの

三味線(そのものです!)
棹の太さ・皮の張り方・糸巻きや駒など、ジャンルによって全て変わります。
撥(バチ)
大きさ・素材が変わります。
曲目
→ジャンルによって全く変わります。
演奏したい曲名がはっきりしているのであれば、それがどのジャンルなのかを調べればある程度教室が絞れます。

弾き方
→奏法が全く変わります。
唄い方
→発声法や細かい技術が変わります。



※決して、個人の好みで変えているのではないので、ご注意を!


イメージがなければ、ネットで自分の演奏してみたい曲名などを調べて見てもいいでしょう。
動画で聞いたり見たりするのも分かりやすいと思います。

STEP.2 お稽古のスタイルを選ぶ

ジャンルがある程度絞れたら、次はどんなスタイルのお教室なのか?
をチェックします。

個人の先生が、ご自宅やお稽古場を構えて指導にあたっているものは
「喜多川◯◯ 三味線教室」「◯◯派 小唄お稽古処」など、先生個人の名前や、その先生の属する流派が明記されているのが特徴です。
昔ながらの正当なお稽古スタイルで、丁寧なマンツーマン指導が基本です。
お月謝や料金は設定が自由なため、各お稽古場のお月謝や料金は非常に様々です。
HPやブログなどで明記されていない限り、直接問い合わせてみないと分からない所があり、敷居が高く感じてしまうかもしれません。
でもそれは「口で伝え、人と人との繋がりを大切にする日本古来の習い事だからこそ」という大きな特徴でもあります。

複合施設などのカルチャーセンターで、三味線の指導をされる先生もいらっしゃいます。
その場合はカルチャーセンターのHPや代表窓口で予め色々と情報を集めることができるので安心です。

楽器店などが運営する教室もカルチャーセンターと似た所はありますが、開催している所も限られますし大雑把に「三味線」とだけ書いてあることも多く、結局は直接問い合わせるまでジャンルや講師の先生の経歴などが分かりづらい事がしばしばあります。

ネットだけでなく、地域の電話帳には通いやすい距離にあるお教室が記載されていたりするのでそれも宜しいかと思います。(通いやすさは長く続けられるポイントになりやすいです♪)

どんなお教室で、どんな先生に教わりたいか(男性or女性?若いorベテラン?)という事も重要です。


STEP.3 問い合わせる


ジャンルを絞って
どんなお稽古スタイルが良いか決めたら

さて最後は「問い合わせ」です!

1〜3箇所ほど教室の候補を絞れたら、次は問い合わせです。
(絶対ここ!という本命があればもちろんそこだけのお問い合わせで大丈夫)
最初はメールでも良いですが、一度は電話でお互いの声を知る事をオススメします。

会ってみないと分からない事も多いですが、自分の直感も信じてあげて、先生とお話してみて受けた感覚も大切にしましょう。
電話で話してみて「ちょっと苦手な感じ…」という場合、お稽古も次第に足が遠のきがちになってしまったりするものです。

個人の教室ですといきなり先生が電話に出て応対する事も多いので、緊張するようでしたらお手元に、聞きたい事をまとめたメモを用意しておくと真っ白になっても安心です♪
要点をまとめておく事で、お忙しい先生のお手間を取らせてしまうのも最低限に留める事ができます。
お稽古中だったりお休みの日ですと電話に出られない場合もあるので、その際には留守電を残しておくと良いでしょう。

電話が繋がったら、はっきりと明瞭な声でお話しましょう♪

①まずは自ら名乗り、教室に興味を持った旨を伝える
②どんな事を習いたいのかを伝え、教室の稽古内容を再確認
例「まったくの初心者で、小唄のお三味線を弾けるようになりたいのですが、先生のお教室でご指導頂くことはできますでしょうか?」
③教室を開催している日や時間、体験の有無、お月謝(おげっしゃ、月額のこと)など、自分の決め手となる重要な事項を質問
④話を聞いて心が決まれば、体験など、お稽古場に伺う約束を取り付ける

※ここに注意!※
「◯◯先生という方にも問い合わせたのですが」など、自分が問い合わせた他の先生や教室の名前は出さないのがマナー。例えジャンルや地域が違っても先生同士のネットワークは弟子が思うよりずっと広いものですから、無闇にお名前を出すのは両方の先生に失礼になってしまう事があります。入門前でも後でも、どちらもです。

礼に始まり礼に終わるお稽古事。
お稽古を始める前からその心構えがあると人としてお互い気持ちが良く、とても素敵ですね。

 

必要なお金や、事前に用意すべきもの



いざ教室に入門をするとなると、その後にかかってくるお金の事が気になる方はとても多いと思います。

主に必要なお金は以下の4つです。
※先生にお渡しするお金は、何も言われない限り新札で用意するのが礼儀です。
間に合わない場合は一言お詫びを添えましょう。

月謝
入会金(お膝付 おひざつき、とも言います)
出演料(発表会など)
その他諸経費(お稽古に必要な物を買うorレンタルするなどの経費)


三味線教室では
月謝(げっしゃ)」という月額制が多く採用されています。
週に何回、月に何回かなどは各お教室によって違うので、コストを気にされる方は比較検討されると良いかもしれません。
お月謝の価格は教室によって実に様々です。
数千円のところから数万円のところまであります。
ただし、その値段はあくまで各先生が自由に設定しているものなので、相場より安いから指導が少ない、高いからプロになれる…という絶対的な基準にはなりませんのでご了承くださいね。
無理なく予算に合わせて選んでみてください。
ちなみに私の教室は、月3〜4回のお稽古で、お月謝は7000円〜10000円です。
自他共に認めておりますが、かなり安い方です。
(昔から価格を変えていないのでこの現代ではちょっと大変だけれど^^;)
ご参考まで。

ちなみに「お月謝」というのは、自分の都合でお稽古をお休みしても金額は変わりません。
例えば・・・
「本来1週間に1度通って、月に4回通うつもりだったのが仕事や体調不良などが重なり、今月は2回しかお稽古できなかったのでお月謝を4回分で割り、翌月その分を差し引いて先生にお渡しする」
なんていうのは絶対にNGです。
お月謝はあくまで「その先生のお稽古場に籍を置かせてもらい、お稽古をつけてもらう」ために納めるものです。言わば在籍料。
先生は、お稽古だけではなく、在籍しているお弟子さん方を世話して率いて、育てるべく指導していくためにたくさんの時間と労力を惜しみなくかけています。
ですので1回いくら、という割り切りとは少しニュアンスが異なります。
旅行で1ヶ月留守にしていたから家賃を納めなくて良い、とはならないですよね。
それと同じことと考えて頂ければ分かりやすいと思います。

入会金もやはり各教室で設定が変わります。
入会金の必要ないお教室もありますので、体験時などに先生に確認しておきましょう。
個人のお教室では、お月謝一ヶ月分を入会金(お膝付)とする事が多く、一回目のお稽古の際に、お月謝とは別にのし袋を用意し「御膝付」と書いてお渡しします。(不動産などでいうところの「礼金」のようなものです♪)
お月謝は、先生が用意してくださるお月謝袋に入れてお渡しするか、月謝袋のないところでは封筒に入れて、先生の方へ向けて「よろしくお願い致します」と丁寧に差し出します。

カルチャーセンターなどですと現金のやり取りをせずに振込みなどでご案内があるでしょうから、各教室のやり方に従ってください。

その他の経費、そして事前に用意するものですが、これは購入や用意が必要となった段階で、先生から提案・指示があるので待ちましょう。
例えばバチや指かけ(指すり)などの小物。
知識のないうちにネットやオークションなどで小物を見つけて買っても、先述のようにジャンルによる違いがたくさんあるので、間違ったものを購入してしまえば使い物になりません。
また、その先生ごとにオススメの仕入先をご存知でいらしたりするので、購入を決める前に必ずひと言、先生に相談しましょう。
「自分で探して買っておいてね」と言われない限りは
“先生に言われた通りの物”を“手順を踏んで”
調達をする事が大切です。


 

お稽古の頻度と、弾けるようになるまでの期間




お稽古の頻度は
・週に1回
・月に2回

など教室によって様々です。

月に2回のお稽古は大体隔週ペースになりますので、お忙しい方や、ある程度お稽古を積んだ方にはいいペースと言えるかもしれません。
月に3〜4回のお稽古では、記憶が割と新しい内にまた次のお稽古日がやってくるので、自ずと習得スピードも早くなり、稽古内容も濃くなって行きます。

上記のようにお稽古の頻度が異なれば弾けるようになるまでの期間も変わりますが、それも加味しつつ、私のお稽古場での習得目安を表記してみます。


お稽古の頻度と習得の目安

【月に2回(隔週)】
最初の1ヶ月で「さくら」を弾けるようになる。
口三味線を習得。
譜面の読み方を習得。
以降、短い曲であれば2〜3ヶ月に1曲ペースで習得。
本格的な曲目は6〜10ヶ月で習得。


【月に3〜4回(ほぼ週1回)】
最初の1ヶ月で「さくら」を暗譜で弾けるようになる。
口三味線を習得。
譜面の読み方を習得。
以降、短い曲であれば1〜2ヶ月に1曲ペースで習得。
本格的な曲目は4〜5ヶ月で習得。


【月に1回】
始めて3ヶ月で「さくら」を弾けるようになる。



ご自宅で自主練すれば…と思われるかもしれませんが、三味線を始めたばかりの人が自宅でいきなり曲を弾く、というのは実はかなり難しいです。
なぜかと言うと、習った曲がどんなに簡単なものでも、三味線は調弦から始めないとならないからです。
三味線チューナーもありますが最初から正しく使いこなすのは難しいです。
糸巻きの扱いを覚える必要があるからです。
三味線本体の扱いに加え、糸の調整の仕方も習わない事にはちんぷんかんぷんなハズです。
まずは「こんなこと聞いちゃいけないかな…」と気構えすぎずに何事も、先生に質問・ご相談いたしましょう♪


お稽古場での心得


まず何事においても、礼儀は大切です。
日本の礼節というのは堅苦しく捉えられがちですが、その本来の意味は全て

「相手を重んじ、お互いに良い気持ちで過ごすため」

であると私は考えています。
相手の目を見て、丁寧な言葉遣いで挨拶をし、深くお辞儀をする。
これは日常においても大切なことですよね。
目も見ずにおざなりな挨拶で、気持ち良いと感じる人は非常に少ないはずです。

教室という場所は「先生に教えて頂く場」
であり、お金を対価としてサービスを提供してもらう場とは異なります。

近年では
「お金を払い教室で習う」=「支払う側の生徒がお客さん」
と当然のように捉えられがちで、私の周りでも頭を抱えるお師匠さん方が増えてきました。

教室では、三味線を弾いたり唄ったりする技術の習得だけでなく
師弟関係から始まる礼儀作法や、教室での新しい人間関係、舞台に出るなどの新しい人生経験などなど・・・
それらを師匠や先輩方から教わり、自分の人生を更に豊かなものにするための「学び」を得て行くことができます。

こういった事を踏まえて、お稽古場での心得というものをまとめてみましょう。

・お互いが気持ち良く過ごすために、礼儀を大切にする
・初めての世界の常識は知らなくて当然なので、怖がらずに質問する
・師匠、先生は、サービスを提供する人ではない
・弟子、門弟は、お客さんではない

と、色々申し上げましたが…
これらはあくまで誰にも強制されていない「心得」です。
でも、この心得を持っていればどこの教室へ行っても、気持ちの良いお稽古ライフを送る事ができるのではないでしょうか。


さいごに



少しは参考になりましたでしょうか。
ここまで、これから始めようとする方々の不安を解消して、楽しくお稽古に通えるよう事細かに書いてきました。

最後に、私の知りうる限りのお師匠さん方の親心を綴って、第一弾の記事の締めくくりとさせて頂こうと思います♪

何人もの上に立つ「お師匠さん・先生」であっても、一人の人間です。
自分を信頼してついてきてくれるお弟子さん達を、責任を持って預かっています。
そんなお弟子さん達を育てるのはまるで子育てのようで、時には厳しく指導もしますが、すれ違って落ち込んでいたり、うまく伝わらなくて悩んでいたり、飛び跳ねたい気持ちを抑えて喜んでいたりするんですよ。


皆さまが、楽しく豊かなお稽古ライフを過ごせますように。

やすのぶ